一瞬で解けなかったら、興ざめというものだろう。

一瞬にして解ける

1904年になってはじめて蝶ネクタイが生まれたのか。そんなことはない。蝶ネクタイは総称して 「ボウ・タイ」という。これを大別すれば、「バタフライ・ボウ」と 「クラブ・ボウ」とになる。結んだ時、羽根が大きく拡がるの がバタフライ・ボウ。 一方、直線的な結び目になるのがクラブ・ボウである。要するにクラブ(棒)状蝶ネクタイと呼ぶわけだ。
日本で 「蝶ネクタイ」というように、フランスでも 「パピョン」(蝶)という。日常会話としては充分これだけで通じる。世界中の言語で、と話を拡げるつもりはないが、少なからぬ人たちが蝶ネクタイから蝶を想像するのではないか。
ところで、この蝶ネクタイはどうして生まれたのか。
端的にいえば、クラヴァットの蝶結びが独立したものである。
シャツの襟型が変化し、より簡略なネック・ウェアが人気を集めるようになって、あのクラヴァットの結び目だけが復活したわけだ。
では、蝶結びはどうか。それは知らない。知らないくらいに古い歴史があるのだろう。
フオアインハンド結びもそうだが、蝶結びも実はエリートなのだ。
一回の動作で簡単に解ける。結ぶはいいが、解く段になって、結びこぶができるようでは始末に困る。
一瞬にして解ける、という意味においては蝶ネクタイ、優等生である。
タキシードにブラックボウを結ぶ。で、パーティーが終った後のバアなどではらりと蝶ネクタイを解 くのは、粋なものだ。けれども、一瞬で解けなかったら、興ざめというものだろう。

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